11-5. ゲル電気泳動による核酸の分離
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次に、得た核酸を検出・分離する方法についてみてみる
核酸は長さ(塩基数)のち外によりゲル電気泳動で分離でき、ゲルの性質や泳動方法を変えることにより、様々な分析に使うことができる
1) 通常ゲル(中性ゲル)による電気泳動
原理
負に荷電している核酸を電圧のかかっている場所(電場)に置くと陽極に移動するが、ゲル中では移動が抑制される
高分子ほど移動しにくいため、核酸を長さ(塩基数)に従って分離できる
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操作の概要
1) 核酸溶液に負に荷電する色素と比重の大きな物質を加え、ゲルの陰極側につくった穴(ウェル:well)に入れて直流電流を流す
試料に電圧がかかるように、電気泳動バッファーの濃度より試料のバッファー濃度を低くする
BPB(ブロモフェノールブルー)などが使われる
試料をウェルに鎮めるために必要で、グリセロールやスクロースを使う
2) 色素の移動を目安に、核酸がゲルから出ない程度の時間通電する
3) ゲルを臭化エチジウム(エチジウムブロマイド:EtBr)溶液に浸けて紫外線を照射し、DNAから発せられるオレンジ色の蛍光を検出する
EtBrをゲルに入れておく方法もある
このように、DNAの検出はEtBr染色で行う
紫外線はDNAに吸収されて損傷の原因となるので、損傷効果の少ない302 nmの波長が主に使われる
memo: EtBrの作用
エチジウムブロマイドは核酸二本鎖部分にはさまるように結合する
このような結合様式をインターカレーションという
ここに紫外線が当たると励起されてオレンジ色の蛍光を発する
DNA結合能に由来する毒性があるので、注意して扱う必要がある
2) 変性ゲルによる電気泳動
原理
核酸を一本鎖状態で泳動させるため、変性剤を加えた変性ゲルを使う
核酸は塩基数に従って泳動され、塩基配列分析などに使われる
変性剤としてホルムアミド、尿素、強アルカリ(DNAのみ)などがあるが、8M尿素入りポリアクリルアミドゲルが一般的
応用例
DNA
DNAシークエンス
S1マッピング
DNase I フットプリント法
RNA
in vitro転写法
RNase保護法
3) ゲルの素材と形状
ゲルの素材は化学的に安定で核酸に対して不活性なアガロースかポリアクリルアミドのいずれかを使うが、長さ(塩基数)によって使い分ける
アガロース
寒天の主成分となっている高分子多糖で、100℃近くの温度で融解し、50℃以下で固まる
おおむね数百塩基長以上の核酸に使用する
ポリアクリルアミド
より小さな核酸の分離に使用する
1塩基長のからの分離も可能であり、分解能が高いため、DNA塩基配列分析でも使用される
ポリアクリルアミドはアクリルアミドモノマー(毒性があるので、取り扱いに注意する)と架橋剤であるN, N'-メチレンビスアクリルアミドを混合し、重合剤を入れて重合(高分子化)させる
電気泳動はPAGE(polyacrylamide gel electrophoresis)と略される
形状
平板状ゲルを作製する
アガロースは水平な板の上で固化させ、水平状態で使用する
ポリアクリルアミドの重合は酵素で阻害されるため、ガラス板にはさんだ状態で(ガラス板の隙間に)ゲルを作製し、縦型電気泳動層を使う
memo: アガロースゲルからDNAを抽出する
代表的なDNA回収方法
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アガロースをヨウ化カリウムで溶かすか低融点アガロースを温めて溶かし、ガラス粉末などに吸着させ、その後溶出する
電気をかけてDEAEセルロースなどのDNA吸着用濾紙に吸着させ、その後溶出する
アガロースゲルを凍らせ、ラップに包んで絞る
複数の方法を組み合わせることもできる
電圧をかけてDNAをバッファー中に溶出させる方法もある
4) 特別な目的のための電気泳動
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パルスフィールド電気泳動
DNAの大きさがある程度(2万~5万塩基長)以上になると分子が電場の方向に揃って縦に並び、分子長にかかわりなくどれも同じような速度で移動するため、長さに従った分離ができない
そこで電場の方向を短時間(パルス)ごとに変えて電圧をかける
このような操作により、DNA鎖がゲルの網目構造に架かって移動が妨害されやすくなり、ゲルの分子篩効果が出る
DNA相補鎖の分離
二本鎖DNAを加熱変性後に急冷すると、一本鎖が不規則に凝集したランダムコイルの状態となる
ただこの場合でも塩基配列に依存する定まった高次構造をとるため、通常ゲルを用いた電気泳動を行うと、各相補鎖のとる高次構造の僅かな違いにより、相補鎖分離が可能になる(図11-9B)
memo: SSCPで塩基配列のわずかな違いを検出する
相補鎖分離の原理を応用すると、DNAの変異や多型の有無を検出することができる
この検出原理によってDNA間で見つかる構造の差異をSSCP(一本鎖構造多型)という
ゲルシフトアッセイ
EMSA法(電気泳動移動度シフト解析)ともいう
通常、タンパク質がDNAより負電荷が多いということはないので、タンパク質結合DNAを電気泳動すると、分子形が大きくなった文だけタンパク質結合DNAはDNAだけのときよりも遅れて移動する
DNA結合タンパク質の検出に利用される